赤ちゃんと子どもの咳・乳児喘息の診断|小泉重田小児科

赤ちゃんと子どもの咳
乳児喘息の診断

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1.赤ちゃんのゼーゼーとは?

赤ちゃんや小さい子どもは、咳のかぜをひいた時(呼吸器感染症にかかった時)にゼーゼー・ヒューヒューすることが良くあります。
小児ぜんそくはゼーゼーする病気ですが、赤ちゃんが1度ゼーゼーしただけでは直ぐに「ぜんそく」とは診断しません。それは、赤ちゃんがゼーゼーする時にはぜんそくと似た色々な病気があるからです。

2.乳児ぜんそくの診断は?

乳幼児ぜんそくの診断目安は「呼気性喘鳴を3回以上繰り返す」ことです。
日本小児アレルギー学会では、赤ちゃんのぜんそくを的確に診断するため、「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」の中で、2歳未満のお子さんのぜんそくを特に「乳児ぜんそく」と呼び、その診断や治療のガイドラインを示していました。その後、「ガイドライン2017」では、5歳以下を一括りにして「乳幼児ぜんそく」と呼ぶようになりました。

3.呼気性喘鳴とは?

呼気性喘鳴(こきせい ぜんめい)とは、ぜんそく急性増悪(発作)に時に聞こえる呼吸音です。
呼気(こき)とは「息をはく時」という意味で、喘鳴(ぜんめい)とは「ゼーゼー、ヒューヒュー」することです。
お子さんがゼーゼー・ヒューヒューする時は、空気の通り道のどこかで、空気の流れを妨げているものがあります。どこで空気の流れが悪くなっているのかを大まかに知るために、お子さんの呼吸音を呼気性喘鳴と吸気性喘鳴の2種類に分類します。
呼気性喘鳴は細気管支炎・ぜんそくなど下気道の空気の流れが悪い場合におこります。一方、吸気性喘鳴は鼻みずが多い時、クループ・喉頭炎など上気道で空気の流れが悪い時に聞かれます。

4.喘鳴を3回以上繰り返す とは?

1回目の呼気性喘鳴を認めた後、よくなって無症状の時期が1週間以上続いてから、次に呼気性喘鳴を認めた時に2回目と数えます。
例:咳のかぜ(呼吸器感染症)にかかった時にはじめて「呼気性喘鳴があります」といわれた場合では、翌日もゼーゼーしていても2回目の呼気性喘鳴とは数えません。咳のかぜがすっかり治って、少なくとも一週間以上たってから、再び「呼気性喘鳴があります」といわれた時を2回目と数えます。
このように数えて、3回以上の呼気性喘鳴を認めれば、小児ぜんそくである可能性がかなり高いと考え診察を続けます。

5.呼気性喘鳴の調べ方

(1)赤ちゃんの息がお母さんの耳にかかるように、赤ちゃんの口元にお母さんの耳を近づけます。
(2)暖かい息がお母さんの耳にかかる時が、赤ちゃんが息をはいている時(呼気)です。
(3)暖かい息が耳にかかる時に「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音が聞こえれば呼気性喘鳴が聞こえたと考えます。

6.夜ひどいのに診察時はゼーゼーしない?

軽いぜんそく急性増悪(小発作)は治療をしなくても自然に軽くなることが良くあります。
喘息を正確に診断し、適切な治療をするために、軽いゼーゼー・ヒューヒュー(ぜんそく小発作)を見のがさないようにしましょう。
夜間に咳で目が覚めたり、咳で嘔吐したりした場合は、本当はその時に軽い「ゼーゼー・ヒューヒュー」が聞こえていたかも知れません。
昼間になると症状が軽くなるのが、ぜんそく小発作の特徴ですから、ご自宅で呼気性喘鳴の有無を調べることも大切です。
ぜんそくの診断は医師の診察により「呼気性喘鳴」の有無を判断することが原則ですが、ご家庭でも「呼気性喘鳴」がきこえるかどうか試してみて下さい。

7.小児ぜんそくとアレルギー検査

呼気性喘鳴を3回以上繰り返した赤ちゃんは、「広義の乳児ぜんそく」と考え、症状に応じてぜんそくの治療を行います。
それに加えて、アレルギー検査で吸入性抗原(ハウスダスト・ダニ・カビなど)にアレルギーがある場合は「狭義の乳児ぜんそく」として、より注意深く経過を観察し適切なぜんそく治療をする必要があるとされています。
そして、アレルギー体質であれば、今後スギや、カモガヤなどの花粉症へ発展しないように、「ホコリダニ対策」を(環境調整)を行いましょう。

8.布団掃除って有効ですか?

極めて有効です。
お子さんは8時間~12時間の睡眠を取ります。つまり1日のうち1/3はを布団で過ごしますので、最も効率が良い対策は布団掃除です。一週間に一度は、布団を干して・電気掃除機で布団表面のホコリダニとハウスダストを吸い取って下さい。 布団の掃除機がけは大変ですが、極めて有効です。ハウスダスト吸入性抗原と呼ばれ、気管支でアレルギー反応を起こし、ぜんそく急性増悪(発作)の原因となります。

9.One airway, one diseaseとは?

花粉はハウスダストより粒子が大きいので,肺の中の細い気管支までは届きません。
しかし、花粉が鼻の粘膜に付着して、鼻でアレルギー反応を起こすと、鼻アレルギー自体が他臓器にも影響を及ぼす物質を作り出し、結果的に気管支のアレルギー(ぜんそく)を引き起こすことが近年わかってきました。
空気の通り道は、口・鼻・のど、から気管・気管支を通って肺に達しています。この一筋の空気の通り道(One airway)を一つに臓器と捉え、鼻アレルギー(花粉症)も、気管支のアレルギー(ぜんそく)も、同じ”気道”という一つの臓器の病気(One disease)と考えて、ぜんそく治療を組み立ててゆく考えがあります。
これを英語では"One airway, One disease"と呼び、この考えに則した治療が最近の主流になっています。
アレルギー体質の方には、ぜんそくに限らず、他臓器のアレルギー疾患のケアが必要です。具体的には、スギ花粉症を合併した喘息患者さんには、鼻アレルギーの予防や治療を積極的に行い、アレルギー性副鼻腔炎を合併した患者さんには耳鼻科の医師と協力しながら治療をすること、などです。

10.ぜんそくと似た病気

赤ちゃんは咳のかぜ(呼吸器感染症)にかかった時に、乳児ぜんそくと似た症状が見られます。
特に急性喉頭炎(仮性クループ)、急性気管支炎、毛細気管支炎、急性肺炎などにかかった時に呼気性喘鳴を認めることがあります。
乳児ぜんそくを診断する時には「呼気性喘鳴を3回以上繰り返す」ことなどの診断の目安を基に慎重に判断します。
また、後鼻漏(アレルギー性副鼻腔炎などにより鼻汁が鼻からのどの奥に流れること)、胃食道逆流現象、ピーナッツなどの気道異物、えん下協調障害、心臓や気管支の生まれつきの病気などの病態でもゼーゼーすることがあるので慎重な判断が必要です。

11.いつまで、治療するのですか?

乳児喘息として治療を始めた場合は、治療方針を3ヶ月毎に大きく見直します。
ここでは、詳しくは触れませんが「ゆっくり寝られるようになった」、「ぜーぜーしなくなった」、あるいは「咳が出なくなった」というように、ある一定の治療目標に達した場合でも、肺の中のアレルギー性炎症が残っています。
治療を減らしてゆく際は「効果が補助的な薬」からゆっくり薬を減らしてゆきます。「ゆっくり」というのが概ね3ヶ月毎の減薬を意味します。
但し、赤ちゃんによって、かなり早く減らす場合もありますので、あくまでも目安です。

小児ぜんそくの診療

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